メールマガジン バックナンバー
第7号 (2011.8発行)
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本メールは、メールマガジンメンバーの皆様および、お問合せ、イベント・
セミナー等にてメール交換させていただいた方にご連絡いたしております。
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メルマガメンバーの皆様へ
早いものでもう8月です。
今朝、通りがかった公園でいくつかのせみの抜け殻を見つけました。
これからしばらくセミの声が聞けそうです。
去年に比べると幾分すごしやすい今年の夏ですが、まだ暑くなるそうですので
熱中症などお気をつけてお過ごしください。
さて、今回は、久しぶりにIFRSの話題です。
6月に15年に実施される可能性があったIFRSの強制適用を延期することが
発表されていますので、この件について少しお話をさせていただいております。
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+ 目次
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1.IFRS強制適用の延期について
2.メールマガジン バックナンバーのお知らせ
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株式会社 東條経営科学研究所 http://www.tojolab.com/
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1. IFRS強制適用の延期について
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(1)IFRS延期の状況
(2)それでもいずれIFRSは確実に適用される
(3)日本も主張するべきである。
(4)結論
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(1)IFRS延期の状況
5月下旬、米国では、IFRS適用に関する実務者素案が公表されました。
決してIFRSから撤退の意図表明ではありませんが、実質的に、適用を
先延ばしするとともに、内容的にも見直すべき課題がある、としています。
筆者が考えますには、米国とて、IFRSのもつ課題点をそのままにして
おいては、適用開始できない、と考えたのではないでしょうか。
これを受けてかどうかは定かではありませんが、日本では6月の下旬に
自見金融相は、準備期間を3年としてきたのを、5〜7年程度にすると
表明しました。
多分、スケジュール的には、2〜4年後退することになるのでしょう。
今までは、早ければ2015年3月期から強制適用となっていましたので、
あせっていた企業も多かったことと思います。
これが、2017年〜2019年になるのですから、かなり先の話になっ
たと思って間違いないでしょう。
特に日本の場合には、東北大震災もあって延期されるのではないか、とも
いわれていますが、それも理由のひとつでしょう。
別の見方をすれば、少し考える時間ができたのだ、ともいえます。
これを機に少し冷静に考えてみたいと思います。
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(2)それでもいずれIFRSは確実に適用される。
そうはいっても、いずれIFRSは確実に適用されることになるでしょう。
そして、その時期には、やはり、相当の覚悟が必要であることには、変わ
りない、と思います。
先行して、IFRSの適用を決定された企業におきましては、延期判明後
も、IFRSに向けて、経理規定の改定を進めるなど、現在も継続されて
います。
準備期間として、約半年をかけ、業務担当者、経理担当者、IT担当者な
ど、全部門を対象にして、IFRSの研修を行い、対象者は延べ約600
人になるそうです。
会計士を交えて検討を行い、導入プロジェクトにはすでに50人ほど参加
しているとのことですが、まだ、開発工程には入っておらず、経理規定改
訂完了後、ITシステム構築に入ることになっています。
目標は、2013年4月開始を想定しておられると思います。
ハードな開発が予想されます。
一体、日本の上場企業全てがこのようなことを行なっていかなければなら
ないのでしょうか。
いづれ、資金調達のグローバル化は避けて通れない時代が来ますから、い
づれの企業にとりましても、多かれ少なかれ状況は似通ったものであり、
対応するとなれば相当の覚悟が必要であることには変わりないでしょう。
延期されたことを幸いとしてでも、やはりできるだけ早く取り組むことが
肝要と考えられます。
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(3)日本も主張するべきである。
これまで、IFRSは早期に強制適用する必要があるとの前提で、とにかく
IASBの方針にしたがって、いかに導入するか、ということが中心課題と
なってきました。
しかし、考えてみるとIASBの方針にも再考が必要ではという点もあると
思います。
ここでは、計上時期、コンポーネント資産の2点に絞って議論してみます。
計上時期については、あたかも、出荷時点計上はできない、といわれてきま
した。
しかし、日本の現状では、出荷時点で売上計上しても、殆ど問題ない、と
考えられます。
確かに、発展途上国などにおいては、物流状況が安定していませんので、
相手の検収を確認しないと、売上計上できないかもしれません。物流段階
での、事故、盗難、等が想定される国では出荷時点計上は無理でしょう。
日本は状況が異なります。通常、出荷すれば、確実に相手に到着すると思っ
て大丈夫なくらいに物流システムは安定しています。このような場合には、
出荷時点計上で大丈夫なはずです。なぜ、これにこだわるのかといえば、
もし、検収基準に変更するとなれば、業務運用の変更や、ITシステムの
変更等、大きな投資が予想されます。
ある意味で殆ど無駄な投資をすることになります。
これは、何としても避けたいと思います。
すでに米国でもこの点を重要視している感があります。
日本も主張し、IASBの見解を変えていきたいものです。
コンポーネント資産もあまり意味がない感じがします。
よく飛行機の話題が出て、本体、エンジン、座席に分けて管理することに
なっています。
一体何故こんなことが必要なのでしょう。理屈の上では、償却期間が異な
ります。
しかし、長期に使用するものですから、その長期期間を耐用年数として償却
し、エンジンを取り替える(そんなことがあるのかどうか知りませんが)
ような場合には、現在でも、追加資産取得として、償却しています。
それで、何が問題なのでしょう。コンポーネント資産管理は、現在の資産
管理モジュールに余分の負荷と作業を強いることになる割には、効果が期
待できません。
総論として、IASBは“原則主義”と言われていますが、私には“原理
主義”のように感じられます。
こういった点も、日本は主張するべきではないでしょうか。
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(4)結論
いずれにしましても、グルーバルに資金調達を目論む企業にとって、IF
RSを避けて通ることはできません。少し、時間的に余裕ができましたの
で、ここでは、今一度、日本での適用にあたって、考慮することができます。
筆者は、アダプション(強制適用)に関して、少し、疑問をもっています。
確かに、アダプションは、個々の企業の自由度を高めることにはなりますが、
この自由度が簡単に決定でき、かつ運用できるのであれば、それも好ましい
でしょう。
しかし、現実は個々の企業にとって相当な負荷がかかります。
日本の多くの企業が個々別々に同じような検討に時間と金をかけた上に、
さらにその結果を財務諸表上、多くのページを割いて注記で補足していく
ことは馬鹿げています。
また投資家は個々の企業の注記を読ねばならない訳ですから、グローバルな
投資判断資料を提供というIFRSの目的と利便性をそこなう可能性さえ
あります。
これまでは、日本企業にとって資金はほとんど日本国内で調達できました
から、グローバルな資金調達の意識は低かったと思います。
これからは海外からの投資を受け、グローバルな発展をしておく時代に
なります。
その意味で、IFRSの重要性は高まるでしょう。
日本も欧米の会計基準の主導権争いを横から見ていて、それに追随していく
という消極的な姿勢ではなく、企業の繁栄に役立ち、世界経済の繁栄に役立
つ会計基準として真剣に取り組んでいくべき時期にきていると思います。
金融ビッグ・バンに始まり、コンバージェンス(収斂)ということで、ここ
10年間、時価会計や税効果会計が導入されてきました。金融庁を始めとして、
税務当局等が関与し、詳細に取扱が取り決められてきました。各企業は、
その対応にある程度の負荷がかかったにせよ一定の手順を踏んで、導入・運用
してくることができました。
筆者はこれからのIFRS導入も今まで同様に、コンバージェンスしていく
のが正しいのではないかと考えるものです。コンバージェンスの過程で、
(3)で述べたような疑問点を主張し、IFRSに反映できれば、個別企業の
負担は大きく軽減され、国益に適うと思います。
すでに米国でもそのような動きがみられます。
今、IFRS適用まで多少の余裕を得たとすれば、国としてここ一番踏ん張っ
ていただきたいと思うのです。
日本が今後とも経済大国として、世界の発展に貢献していくためにも、国の
努力を期待したいものです。
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2. メールマガジン バックナンバーのお知らせ
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ご覧いただけるようになっておりますので、こちらも併せてご利用いただければと
存じます。
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